芸術というようなものが何故あるか

世の中で何を成し遂げるかよりも、もともとの切実な願いや過程における選択、すなわち頑張って生きた人生に意味があるという考え方があるようです。それからすると、芸術のために色々なものを犠牲にするというのは、バランスを欠いた行為で、意味がないように思えます。芸術は人生における愛の表現に深みをもたらすものであって、それが自己目的化しては、むなしくなる、という感じがします。

なぜ成し遂げたことの意味が限定的かというと、何事も常ならず、ということだからです。今頑張って仕事をしたからといって、100年後の世界を考えると、あってもなくても同じようなものに思える場合がほとんどだと思いますし、1000年後の世界を考えると、だいたいのことが、どちらでも良かったかなという感じになってくるのではないでしょうか。

こういうことをある人に言ってみると、高いレベルの芸術は後生に残る、という意味のことを言われました。これに関しても、5000年後には消えるものがほとんどだと思いますが、同世代やしばらく後の世代の人の人生を豊かにするものではあるかもしれないなと思いました。芸術家は身近な人への愛ではなく、もっと広い範囲に愛を配る存在のようです。