そうじゃないんだ、と言っている映画

新聞はべつに、嘘を書いているわけじゃなくて、暗いニュースはたくさんあるんだと思う。それでも毎日暗いニュースばかりに接していると、自分も暗くなってくる。そこで、暗いニュースは見たくないなあ、と言う人が登場すると、なんだか自分の心の平安のために、世の中で起こっていることを消し去るようで、独りよがりに見えるから、僕は直視するほうを選ぼう、なんて思ってしまうのだが。でも、本当は、暗いニュースばかりに接しているのも、現実の一面ばかりを見ていることに他ならないだろう。新聞にも、明るいニュースは出ているけど、なんかすごい頑張っている人やほのぼのとした家族などという偏りがあるようだ。一年に3回くらい面白いことを言う人とか、人に迷惑ばかりかけているけど憎めない人とかはあまり登場しないのではないか。

「負け組」に入って、不自由をして不安にさらされて生きるのは嫌だなあ、と、僕は人一倍思うのだが、もっとすごいダメな人を描いて、自分はまだマシなのではないかと思えるような映画というものがあるらしい。経済的弱者である事実は変わらなくても、不安にさいなまれながら生きるのと、生きていられるんだからまあいいじゃないか、ありがたいことじゃないか、と考えながら生きるのと、全然違うわけだし。不安であるから、努力するという面ももちろんあるのだけど、度が過ぎた不安が結構多いと思うので、そういう場合は、努力につながるということはないのではないかと思う。

僕は、先ほど言ったダメな人の出てくる映画は見てないのだけど、何かを見て、そうじゃないんだ、と言っているように感じ、ほっと一息つけるようであった体験を最近した。さよならカラー、という映画を見たが、独身で仕事をしてお酒を飲んで寝るという男性が、いかに心豊かな生活を送っているかという話?であったので、そのことであっただろうか。